(一)
今年は、あの有名な冒頭の一句「妖怪がヨーロッパを徘徊している、共産主義の妖怪が」に始まり、「万国のプロレタリア、団結せよ!」の呼びかけに終わる、『共産党宣言』が発せられてから150周年日にあたります。
『宣言』は、共産主義者の最初の行動綱領であり、簡潔な表現の中に、共産主義の世界観・歴史観、イギリスを造物主とするブルジョア的宇宙の世界市場的形成、世界史的主体として発見されたプロレタリアートの歴史的任務、その究極の目標に沿った当面する1848年革命の行動指針、並びに当時の社会主義的・共産主義的文献に対する批判が述べられています。
『宣言』を貫く根本思想は、労働者階級の資本主義からの解放の道筋を、ブルジョワ国家の暴力的転覆、社会的生産手段の私的所有の廃止等による資本主義の廃絶、そして国家の揚棄、階級的支配と階級そのものの廃止を目標とする永続する革命を通じて、「ひとりひとりの自由な発展が、すべての人の自由な発展の条件となるような協同体」、つまり共産制社会を人類史の本史として展望した画期的な革命思想です。
以来150年、この思想は、パリ・コミューンの経験、マルクス『資本論』による資本主義の批判的分析の発展によって深められ、ロシア十月社会主義革命と中国反帝革命をはじめとする今世紀の諸革命によってますます実践的な教訓を豊かにしてきました。それは階級支配の廃絶をめざす世界社会主義革命の炎として燃えつづけ、その生命力を保ち続けています。
とはいえ、ご承知のように、ソ連邦をはじめ「20世紀社会主義」の大崩壊は、全世界の労働者人民の戦列に深い衝撃・沈滞・混迷をもたらしました。引き続くブルジョワジーの側からの洪水のようなイデオロギー攻撃のなかで、共産主義と革命への冷笑が広められてきました。こうした中で共産主義者・左翼戦線の理念的混迷と分散状況は無惨であり、その克服と再生への様々な試みもいまだ実を結んでいるといえない現状にあります。
『宣言』150周年の現在、何よりも必要なことは、プロレタリア解放のための権力が、スターリン主義による党の国家化−「共産党独裁」へと変質し、ついにはソ連邦の崩壊を頂点とする「20世紀社会主義」の大崩壊に行き着いてしまった内的、主体的原因を、そこに生きたわたしたち自身の内省を伴う主体的総括によって、全大衆の面前で公然とあきらかにすることでなければなりません。そうでなければ、わたしたちは、新たな社会主義革命路線を豊かに創造することも、「社会主義の崩壊」「自由民主主義の勝利」を言い立てるネオ・リベラリズムの攻勢に打ち勝つことはできないでしょう。
(二)
わたしたちは、こうした歴史の逆流に抗して、世界各地で社会主義革命を再生させる新たな展望を切り拓こうとして苦闘する共産主義者、労働者人民と共に、『宣言』のもつ世界史的意義を改めて明らかにし、今日の運動の閉息状況を打破すべく、広く共同の記念集会を開きます。
ご承知のように、世界社会主義革命の完遂をめざす国際共産主義運動・反帝人民革命運動の苦闘の過程で、運動の内部にさまざまな亀裂・分裂・抗争を生んできました。それゆえにわたしたちの間には過去の歴史的評価についても多くの差異や対立が遺されています。この集会をよびかける者、あるいは賛同される方の間にも当然にもそれは反映しています。わたしたちは、お互いにそうした意見の差異、潮流の違いをこえて、この共同のよびかけをおこない、同意下さる方々との協働の道を広く開きたいのです。
今、なぜ、「共産党宣言」なのでしょうか?
過去を懐古するためでなく、わたしたちの歴史的経験でもある二十世紀の社会主義諸革命の成果と敗北から学び、二十一世紀への一歩を進めんがためです。
勝利した現代資本主義は、いま「大競争の時代」と称して相互の弱肉強食の闘争と自国の労働者・人民・途上国人民への搾取・抑圧を欲しいままにする一方、みずからに内在する根本矛盾の爆発的表現に苦しみはじめています。
それは、東アジア・日本を襲う通貨・金融危機にしめされるように、世界恐慌の暴力的爆発の前ぶれとしてあらわれています。
この資本主義世界の根本矛盾の激化は、「資本主義の枠内で、民主的に改良」しうるようなものではなく、現代資本主義の大量生産・大量消費、そして大量廃棄という「豊かな・過剰社会」と文明そのものの歴史的限界に他なりません。
150年前、『宣言』が指摘したように「ブルジョア的生産ならびに交通諸関係・ブルジョア的所有関係・かくも巨大な生産手段や交通手段を魔法で呼び出した近代ブルジョア社会は、自分が呼び出した地下の魔法をも使いこなせなくなった魔法使いに似て」います。
つまり、『宣言』に書かれたことは、現在進行中なのです。しかも、資本主義の腐朽と行き詰まりは、次世代の人間の生存さえ脅かす人類史的危機を含んで進行しています。この状況をどう根本的に変革するか、その進路とその先頭に立って闘う革命主体と政治勢力をいかに形成するかがいま、わたしたちにとって共通の緊要の課題となっています。
この日本でも、財政・金融危機の続発する中で、相次ぐ政官財の癒着と腐敗の暴露、そのかれらが資本主義の危機を人民の肩に転嫁しようとくりだす悪政と暴虐の数々は、いよいよ目に余るものとなってきました。橋本自社さ政権と「連合」支配下、まだ闘う狼煙は一挙には上がらぬものの、巷には人々の怒りの声が溢れています。
しかし国際的にはヨーロッパ・アメリカをはじめ、韓国、インドネシア、フィリピン、スリランカ等々で、労働者人民の反撃が始まっています。
わたしたちは、腐りきった資本制社会とその文明を根本より批判し、改造するための新たな価値観、社会と文明の原理、そこに至る展望と行動の指針、運動の現実の利害と未来の解放を確固として推進する道筋を切り拓かなければなりません。
150年前、1848年恐慌の到来とヨーロッパを舞台とした革命の現実性の渦まく激動の中で、その好機を自らつかみとるため、共産主義とは何か、どのような社会を我々は望むのか、それはどのような経過をたどって実現しうるのか、などなど、革命の目的、行動指針を十数回にわたる全国的・国際的討論の中で煮詰め、その成果を『宣言』に結実させ、48年革命の先頭に立った先人たちの活動をいま、学ぶときではないでしょうか。
(三)
わたしたちが、こんにち『宣言』150週年を記念して集うことは、共産主義運動の現状をみすえ、その出発点である『宣言』のインターナショナリズムの精神に立つその理念と方法の核心をつかみ出し、わたしたち自身の経験の主体的総括を通じて、マルクス主義を深め新たな社会主義革命の再生へ結実させていくことだと考えます。
こうした問題意識に立って、世界恐慌が近づく足音が聞こえてくるこんにち、現代資本主義の心臓部にあるこの日本で、世界を舞台に現代資本主義と再勝負を挑む新たな「共産主義の妖怪」物語を語り合い、コミュニストの協働の道を探る場として、わたしたちはこの『宣言』を記念する集会を開きます。
現状を憂え、想いを同じくする多くの方々の賛同と参集を心より呼びかけます。
1998年4月12日
『共産党宣言』150周年記念集会 発起人
記
『共産党宣言』150周年記念集会
日時 6月21日 午後1時〜5時
ところ 総評会館2階 大会議室
主催 集会実行委員会